昭和21年に神奈川県から始まった昭和天皇の全国ご巡幸は昭和29年の北海道まで、総行程3万3千キロ、165日間に及んだ。ご巡幸は、敗戦にうちひしがれた国民に希望と勇気を与え、陛下のおもむかれる所には常に大感激の渦が巻き起こった。そこにはまた、国難に対し、君民一体となって乗り越えようとする、本来あるべき皇室と国民のあり方の発露があった。今の私たちの幸せの原点がここにあるのではないでしょうか。当時の父祖の声に耳傾けて見たい。感謝の想いが沸々と湧き出て来て、これからの、生きるエネルギーになるものと思います。
神奈川県
「握手を求める米人記者」
続いて天皇は、日産重工に到着した。ここでは、トラックの製造過程を役40分見学、やはり従業員に生活のことなどを質問した。帰りがけにハプニングが起きた。GIや米国の新聞記者が、天皇の車を囲み、四、五人がボンネットの上に乗ったり、窓から手を入れて天皇に握手を求めようとしたりした。車は動けず、警護のMPと地元の警察官が排除に当たった。
彼らの様子を見ていると、天皇に嫌がらせをするのではなく、歓迎していることがわかったので、侍従長藤田尚徳らは安心していた。その間天皇も驚いた風はなく、泰然と騒ぎを見ていた。