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御 製(昭和24年佐賀県) みほとけの 教まもりて すくすくと 生ひ育つべき 子らにさちあれ 昭和天皇は昭和24年5月佐賀県基山町の因通寺の引き揚げ孤児寮、洗心寮に、ご巡幸になられました。昭和天皇は住職に近づかれ、『親を失った子供たちはたいへんかわいそうである。人の心のやさしさが子供たちを救うことができると思う。あずかっているたくさんの仏の子供たちが、りっぱな人になるよう心から希望します』と申されました。陛下は40余名がお迎えする各部屋の前に立たれ、お腰をかがめられ、ひとりひとりにお顔を近づかれて、『りっぱにね、元気でね』とお言葉をかけられました。 一番最後の部屋の前で立ち止まられ、そのまま部屋にはいっていかれました。そこには両親の位牌を抱いた女の子が立っていたのです。『だれの?』「父と母です」『どこで?』「父はソ満国境で、母は引き揚げて死にました」『おひとりで?』「日本のおじさんおばさんに連れられて」。陛下はじっとこの子の顔をご覧になって、何度もうなずいておられました。『お淋しい』と、それは悲しそうなお声で言葉をかけられました。ところがその子は首を横に振ったのです。「いいえ、淋しいことはありません。私は仏の子供です.お父さんお母さんにあいたくなったらみ仏さまの前に座ります」。一瞬、陛下のお顔が変わったように拝しました。右のみ手にお持ちの帽子を左に持ちかえられて、女の子の頭をお撫でになりました。一回、二回、三回と。そして陛下は『仏の子供はお幸せね。これからもりっぱに育ってね』と申されました。このとき昭和天皇のお目からハラハラと数滴の涙が畳の上に落ちていったのです。 お車へと向かわれる陛下の服のはしを男の子がつかんで離さないで、くっついて歩くのです。とうとう車のところまでついていきました。お車に乗ろうとされますと、「また来てね」と男の子。『また来るよ』 と陛下。まことにほほえましい光景でした。 昭和天皇陛下の国民を思う母心が、切々と今の私たちにも伝わってまいります。
by hagukumukai
| 2005-05-17 01:58
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